2021まとめ

当方人生史上最大のバルプンテを発動。多少のミスマッチは予期しており、それも踏まえて「際(キワ)を見たい/体験したい」というのっぴきならない ADHD 由来の欲求に負けて、転職を決めたわけだが、案の定ミスマッチの具合が当初予想よりだしいものであった。

一番の要因としては、端的に実力(の見積り)不足である。かなり裁量は高く与えてもらったものの、それを発揮できる器ではなかった事が大きい。

所謂 JTC 的大組織的では異端児であったといっても、所詮組織の看板とリソースが使えなければ、唯の変人であり、事業を動かせる・描ける余地が与えられている(社長の首を縦に振れれば)のにも関わらず、推進力とパワー不足に打ちひしがれる結果となった。なんとなく予見できてはいた結果ではあったが、やはり力試ししてみたかったところが大きい。

既に社長には辞意を伝えており、引継ぎをプランしながら、転職活動に勤しんでおり、これも案の定(今まで就職・転職関連で苦労しなかった事は無いが、これまでで最も)苦戦している。

限界集落に腰を据える事は出来なかったが「通過」(ワードチョイスは現職社長の受け売り)をした事で社会に対する解像度は高まった。端的にまとめるのは難しいのだが:

・サプライチェーンにおける約束(納期)の遵守がいかに重んじられている&難しいか

・それに見合うような対価が支払われている訳ではないのに、納期遵守は本国ではさも所与の様に扱われている

・この前提を共有するが故の受注者/下請けの疲弊が随所で発生している(が必ずしも顕在化してない)

・これらのサプライチェーン下層部の負担・疲弊に依って成り立つ楼閣の上で都心部のホワイトカラー的生活感・価値観が支えられている。

などがより克明にサプライチェーン下流の当事者として、感じるところであった。元々社会人になっても、左寄り思考が強い当方ではあるが、(マクロ的には都心部一局集中は逆らえないのだろうが)、この流れにアンチテーゼを打ち出す流れ(或いはガラガラポンイベント)を是非見てみたいところである。

個人としては、なんとまぁ情けない幕引きであり、また(何も還元する事なく)好意の借り逃げとなってしまった。後悔は一切なく、結局会社には迷惑をかけたが、社長及び関係者の器量の広さもあり、円満退社で納められたと思っている(がやはり本音は知る由もない)。

所謂限界集落に移住し、2年経たずして、挫折の道半ばにあるわけだが、以下の難しさがあった:

経済面:
所謂雇われ人の年収ベース(残業代、賞与込み)では、Total 30%減位のもので、勿論事前に予見できていたものだが、年収ダウンでの転職は「What if…(あの時こうしていれば)」が付き纏い、精神衛生上よろしくなかった。住居費(家賃 3,300円!!)を中心に生活費は概ね下がったものの、車関連費用(ガソリン代1万弱/月、車検・保険・税金諸々で軽でも20 万/年程の固定出費)などが大きく、額面(手残り XYZ万円という勘定よりも、例えば年収600万が年収500万に下がったという)のアイコニックな印家が常についてまわり、サラリーマン続ける限り最新のグロス年収がベンチマークとなるため、常に消化不良が頭の片隅にあった。(考えればわかる事なのに他責思考でしょうもない)。それでも最低賃金付近に張り付いている地域水準の給与(雇われ人がそもそも少ないという側面はあるか)を鑑みると(加えて大体2人以上の子供を養っている)、全くもって贅沢な悩みなのだが、比較対象が過去の自分なので、折り合いがつけづらかった。

仕事:
これも第3者的には見問きしていたものの、やはり企業の看板に下駄履かせてもらっていた上場企業経験者が「何物にもなれない自分」から脱却するための転職ムーブは悲哀にしか繋がらず、当方も漏れなく該当した。将来事業者成りをするにしても、大企業からバファーとしての中小零細規模の組織経験を挟む必要はあまりなく、組織体制や使えるリソースの違いはあるものの、雇われ人としての所作は余り変わらないため、結果として裁量は与えられているのに官僚的プロ・コン分析仕草から脱却できず、仕事人としての力量不足を突き付けられる結果となった。

生活:
これは東北特有かもしれないが、限界独身中年が単身で東北北部の冬を超えるのは(結構そちらの方面の耐性がある方だと自負しているが、それでも)かなり応えた。避寒を兼ねた年末の帰省時には、ちゃんと凍結防止処理(配管・カランの水抜さ、風呂に水をためて自動循環機能を用いて浴槽周りの凍結防止)を行ったはずなのに、1週間弱の不在にて、年初からビッチリ氷が張った浴槽の横で、氷点下5°位の中水風呂を浴びる(そして特に嘲笑ってくれるAudience もいない)という苦行を行った。精神的にも雪国で独身中年をやっていると、孤独もより身に染みる。寄り添ってくれるのは、春&秋ごろに日々代わるがわる家宅侵入してくれるカマドーマ位であった(替わりにGはうわさ通りいなかった)。

 

なんだか個人由来のネガティブな側面ばかり挙げてしまったが、勿論良い事もたくさんあった。詳細は書けないのだが、勤め先は本当に面白い人々の集まりだった。「百姓スピリット」とでも称すべきか、開拓・挑戦精神が異様に旺盛で試行錯誤をポンポンと進めていき、自身が思い描いていた固定費とサンクコストの高い都心部では到底できないスクラップビルドのスピード感もまざまざと魅せてもらった。

いわゆる田舎の相互扶助的温かみにも触れる機会が多かったのはありがたい。移住後の3か月は住み込みで居候させて頂いた。所謂田舎留学の延長みたいな感じで、大変貴重な経験と思い出になった。同僚にも同じく大変お世話になったに加えて、ある日、町役場で証書発行のため、現金が必要になったのだが(最寄りのATMは20km程離れている)持ち合わせが無く、役場の担当が 500円ばかし立て替えてくれたのには、行政の厚い壁を易々と越え、機転を利かして頂いた事(都心部では絶対にあり得ない状況)に恋心が芽生えてしまいそうになった(たまたま若い女性の方だった)。

加えてなんとも広い御心を以って余所者の私が馴染む様に諸々配慮して頂いた。「うち」と「そと」のボーダーが垣間見える場面も勿論あったのだが、それ以上に普遍的な相互扶助の施しを受ける場面の方が多かった。いい歳して独身やってる異常中年にも、温かい人々であったし、自然と自分も同じ扶助の姿勢をミラーできていたと思う。

東北という地域の解像度が高まったのも良かった。これまでは「東北=寒くて人口減少吹きすさぶ地域」という一枚岩的な印象であり、概ねそれは間違いではないのだが、その中でもかなりのグラデーションとバリエーションが混じりあい、東北の中でも(色んな切り口があるが)マーブルな地域であるというのがより具体性を以ってイメージできるようになった。特に同時期に南北を縦断すると冷気のノッチが変わるのが肌身で感じられ、いっしょくたにしがちな東北の中でも自然の外観の変化は勿論、人口減少の影(老人:子供比率など)、インフラ整備、積雪、気候などの切り口だけでもかなり濃淡があり、旅行という極一端の観察ではあるが、この濃淡に対しての感度が高まった。

車に関して:

固定費が勿論かさむのだが、車という Mobilityが見せてくれる世界と刺激の拡張(というと大袈袋だが、まさにこの語感がしっくりくる)は電車ベースの生活では事受できない利点であり、諸質用を過かに勝るQOLへの寄与があると実感した。

居候:

転職・転居後3カ月程創業一家の母屋に住込みで暮らす。多分この時点で普通はハードル高いが、3カ月というスパンは絶妙に丁度良く、限界集落で独りで暮らすより若人に囲まれて楽しく過ごせた。おっさんがやるものではないが、若い頃に「他人の窯の飯を頂く」経験を積むのは貴重である(受け売り)。

越冬@雪国:

物理的な辛さは勿論、独身中年には精神的受難である。中東の50°cの現場作業は結構(ほんの数日なのでお触りだが)適応できそうであったが、雪国の寒さはの方が遙かに辛い。上段の居候後に夏に文豪が住みそうな平屋に転居したため、秋口までは恐らく築40年超の3LDKを持て余し、特に不満もなかったが、冬場の寒さと寂寞は応えた。北欧やら小説家に自死が多いのも何故か納得する、雪国での越冬であった(現在進行中)。

法人設立:

転居前に、資産管理法人設立。一応役に立ったといえば立ったが、今のところ初期投資(合同会社登録免許税6万、電子定款+印鑑1万位)+固定費(税理士報酬: 15万位)に見合う規模では全くなく、はっきり言って完全にコト消費。作ってはみたものの、ままごとの延長線上である。(株式会社ではないので、代表取締役(社長)を名乗れない)

 

今までの人生にも当てはまるのだが、体験至上主義の当方にとっては、今般の移住・転職決断には一切後悔はなく、示唆と経験に富むものであった。意図したわけではないが、中東の砂漠(土漠)から東北の限界集落での越冬まで、極めて稀有な遊牧経験を積むことになった。おそらく残り幾許かにはなるが、現職の整理をしながら、春先に向けで温かくなる東北の春・初夏を楽しみたい所存。

 

個人的Fads:

チェーンソーマン: THEマスターピース。ルックバックからの導線で一気読み。不条理な世界・イベントに主人公が直面して無力感と日常が交差する(現実世界にも通ずる)様な分かり易いけど引き込まれる導入/設定で始まり、ランダムなメタ演出があったり、突発的裏切り(というかスカし)が入ったり、王道マンガではスピード感意識して通り過ぎていたであろう思考実験的挑戦を幾つも散りばめている。 それでも(というかそういった蛇足に見える布石があるから)幹の清々しい勧善懲悪を外してない。時折振りかかるこれまたランダムな理不尽がどう転がるか分からない緊張感を生んでいて、痛みを伴って不条理を超克した際の王道の爽快感が一層輝く感じ(もあれば虚無に包まれるパターンもあり、これがどちらに転ぶか分からないのも良い)。そして適度なエロ(とさらなるエロへの期待)が描かれており、incest、ペド、ソドム、bestialityなど(タブーが気持ち悪すぎない程度に編集側が規制したのかもだけど)問題提起されており、常識や一般通念みたいなものに喰ってかかっている攻撃的姿勢がこれまた良い。(「栄養のあるものを飲み込んでしまうんじゃ」のくだりは漫画史上で一番笑った)ファイヤーパンチ、短編集もおしなべて良作揃い。漫画を読むためにマン喫に行くこととなった初めての作品。

宮本から君へ: TVerでドラマのみ視聴で映画は未了。正直鬱陶しいプロット&主人公なのだが、主演の池松壮亮、田島を演じた柄本時生が好演。漫画もちらっと読んだが、珍しく実写(現状ドラマのみだが)の方が好きであった作品。勿論MOROHAにもにわかはまりし、X文銭シリーズは一通り履修。

ヨルシカが田舎道のドライブのお供に合うのと、新規では美波、Alan Walker(Faded, Spectre) 、麻痺(Yama)などを良く聴いた。